読書日記

毎日本を読まないと眠れない本好き。おススメの本について感想文です。

「人生で大切なたったひとつのこと」 ジョージ・ソーンダース

★紹介図書 「人生で大切なたったひとつのこと」 ジョージ・ソーンダース

 

日本ではまだ一般的ではありませんが、アメリカでは大学の卒業式に著名な人物を招いてスピーチをしてもらことがよくあります。Appleの創業者スティーブ・ジョブズスタンフォード大学でのスピーチなどは有名で聞いた事がある人もいるでしょう。今回紹介する「人生で大切なたったひとつなこと」はニューヨークの名門校シラキュース大学教養学部の卒業式で行ったスピーチの全文です。15分ほどで読むことができるとても短い本ですが、内容は何度も何度も繰り返し読みたくなる深いものです。

 

 ソーンダースは卒業生へ向けて自分の人生で最も後悔している一つの話をします。それはソーンダースが小学生の頃、転校生としてやってきたエレンという女の子とのエピソードです。エレンはクラスに上手く溶け込めず同級生から無視されるなど、ひどい嫌がらせを受けていました。ソーンダースは自ら嫌がらせをすることはありませんでしたが、助けてあげることはしませんでした。やがてエレンは自分の居場所を学校で作ることは出来ず再び転校していきました。

 

 ソーンダースが人生の中で最も後悔していることは「エレンへのやさしさが足りなかったこと」だと述べています。目の前に苦しんでいるひとがいたとき、どのような対応をするか、これは本当に人間力が問われる場面だと思います。自分がソーンダースの立場に立って考えたとき、エレンに対して守ってあげることができたかと考えれば、おそらくできなかったでしょう。それどころか、周りの雰囲気にのまれ、嫌がらせをする側に回っていたかもしれません。

 

 子供は弱い存在です。嫌がらせを受けている人がいて、変に助けたりすると今度は自分がいじめられると思い、いじめる側に加わったり、知らないふりをすることもあるでしょう。周囲の同調圧力に屈せず、自分の信念に基づいて行動することができる子供はかなり少ないのではないでしょうか。

 

 エレンの立場に立って考えてみると、転校先で自分のことを誰も受け入れてはくれず、居場所をなくしどれほど辛い思いをしたことでしょう。ほんの少しだけ勇気を出してやさしい人間になることで、エレンの状況は大きく変わったかもしれません。

 

 ソーンダースのエピソードを聞いて、改めて自分の人生を振り返ってみると、あの時もっとやさしくできていたらなと後悔していることはたくさんあります。すべては物事を自分中心に考えていたからです。本当の強さとは、どんな状況でも相手の立場にたって物事を考えることができ、勇気をもってやさしい行動ができるひとなのではないでしょうか。今回、この本を読んであらためて自分の優しさがたりないという事実に気づかされました。

 

「昨日の自分よりほんの少しでも優しい人間になろう」この事だけは忘れないでいたいです。