読書日記

毎日本を読まないと眠れない本好き。おススメの本について感想文です。

「夜と霧」 ヴィクトール・E・フランクル

★紹介図書 「夜と霧」 ヴィクトール・E・フランクル

 

 今回紹介する「夜と霧」はオーストリアのウィーン出身の心理学者、ヴィクトール・E・フランクル第二次世界大戦中、ナチスにより強制収容所での体験記です。あまりにも壮絶な体験を心理学者という視点から語られています。

 強制収容所の体験を通して、フランクルは極限状態に追い込まれて人間の感情の変化を大きく三つに段階分けしています。

 

第一段階は施設に収容される段階の「ショック状態」です。明日自分がガス室に送られるかもしれないという恐怖におびえ続けなければならないのです。私たちが日常で経験するショックとは比べられるものではありません。正常な精神状態を保つことなど不可能です。

 

第二段階は収容所の生活における「感情の消滅」です。強制収容所での生活は奴隷以下の地獄の生活です。空腹・寒さ・苦痛・睡眠不足などに耐え続けなければいけません。そんな生活を毎日続けていくとあらゆる感情が失われていくのです。日々のつらい出来事に心が反応していると精神を保つことが出来なくなるので、自分を守るため感情を失うようにしているのです。

 

第三段階は収容所から解放されたあとの「精神の弛緩」の状態です。私は、収容所を解放された人々は手を挙げて歓喜し、抱き合って涙を流しているような光景を想像していたのですが現実は全く違っていました。人々はこれまであまりにも抑圧され、感情を失っていたので、突然自由になったことを現実として受け入れることができなかったのです。

その後、自分たちの経験を語ることで、押し込められてきた感情が席を切ったように爆発していくのです。

 

極限状態に置かれた人間の感情はこのようなに変化していくそうです。強制収容所の悲劇は歴史の教科書では一つの歴史上の出来事として習いますが、「夜と霧」を読むことで強制収容所に入れられるということがどういうことなのかがよく分かります。

 

後世に語り継がなければいけない名著です。まだ読んだことがないという方ぜひ読んでみて下さい。